第1章 穴無き穴と仲間達
彼から放たれた唐突すぎる発言。
正直事の収集がつかないというか初対面でなにいってるんだろうこの人というか。
その言葉はあまりにも強く私を打ちのめし、異常な熱量を溢れさせる。
「今、あいつらの甘さに甘えてんだろ。」
「なっ・・・!」
「江からてめぇのことは全部聞いてた。家に帰れねぇ事も泳げねぇ事もハルと上手くいってねぇのも。それ今現在までで一つでも変化したか。」
答えは勿論Noだ。気付けば、この居心地の良さに安住し始めている。一部除けば優しい人達楽しい人達に囲まれながら、あのプールに落ちた日から、一体どれくらいたったのだろう。
「・・・やっぱな。」反応なく俯く私を見て、彼は舌打ちと共に吐き捨てるように私に言う。そしてまた続けた。
「俺はてめぇのことなんか知ったこっちゃねぇ。だから尚更言わせてもらう。あいつらの練習量が減るようなマネしたら、ただじゃおかねぇから。」
ああ、この煮えたぎるような熱さは、一体。
私はそれを戸惑う子供のように口に出すしか方法がなくなってしまった。
「・・・・・けんな・・・。」
「行くぞ似鳥。」
「ちょ、ちょっと先輩!」
「ふざけんな畜生ぉぉおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!」
2人はさっきまで萎びたようにしょぼくれていた人間の出す大声で振り返る。
「あんたに何がわかんの!!??江ちゃんから聞いただけでしょ!?関わってもない人間に、しかも初対面!!それがかける言葉!!??私だってね大変なの!!!別に自分が特別大変とか言うつもりないし皆に少なからず迷惑かけてるのも自覚ある!!!でも七瀬君に言われてから!!!!水泳から逃げたの!!!!でもどんなに逃げても彼とは仲直りできないし私は私でどっかでむしゃくしゃしたままだしなんかもう家に帰れない気がするし怖いの!!!!向こうでだってずーーっと1人だった!!!水泳いつまでたっても上手くならないし周りの目は何にも変わらないまま!!!!」
唖然としている2人をおいたまま、私の怒りのマシンガントークは続く。