第1章 穴無き穴と仲間達
***
ー数十分後。
私は日々の疲れも忘れて久々に飛んだりはねたりし、すっかりくたくたになっていた。
「お兄ちゃーん。お菓子食べたいー。」
蓮君は兄のズボンをぎゅむと握りながら飛び跳ねている。
蘭ちゃんもそれは同じだったようで、砂場のおもちゃを一頻りかき集めると蓮君と同じように兄の元へとかけよった。
やはり兄ってより父だな・・・。(何度目)
「・・・じゃあもう帰ろっか。」彼が2人に目線を合わせると、優しい微笑みを持ってそう返した。
「妙美ちゃんも帰ろ!」
「うん。」
2人は彼の両手を塞ぐと、私の方を向いてニコニコ笑う。急いで近くのベンチに置いた荷物を取ってくると、その3人に並んで同じ帰路へとついた。
「妙美ちゃんお家来るよね?」
「妙美ちゃん一緒にお菓子食べる?」
2人は兄を見上げ、そう聞いた。
このエンジェルめ、私はもうどうすればいいんだこの可愛い子達を。誘拐か?落ち着くんだ私。
一方真琴君は、その2人の無垢な質問にどう答えて良いのか困り果ててしまった様子だった。
チラと私と目を合わせると、眉を下げながら「いい?」と伝えてくる。
・・・やや、どうしたものか。
勿論縦に首をヘドバン級に振って了承したいところだが、橘家ご両親もこんな休日の昼下がりじゃご在宅中だろう。謎の女(しかも出処不明。)を息子が連れてきたりして怪訝にしまいか心配だった。
「ご両親大丈夫かな・・・?っていうか真琴君が大丈夫?」
「俺はいいよ!でもそうだね・・・なんて説明しようか。」
現在七瀬君の家に居候をしている私だ。手前の家の人々ならこの先会うことも必然。それを考えると七瀬君に迷惑がかからないのは私が今日会って挨拶することだが・・・なぜ居候しているのかとか聞かれたらどうしよう。
七瀬君のご両親を使うような嘘はつけない。今のところご両親との面識私の認識一切合切わかっていないからだ。
「夏休みの間だけ気まぐれで遊びに来た友達とか?」
それなら確かに親の許可はいらないが・・・。
と、友達かぁ・・・。
「とてもそんな関係には見えないだろうね・・・。」
真琴君が私を察したのかそう言う。