第1章 穴無き穴と仲間達
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ところ変わって電車組。
「あれ、そういえば渚君、私達重要な事忘れてた!」
「・・・あっ!!」
「なななんですか今度は・・・。」
怜は怪しむような視線で2人を交互に見た。
「憧れの人・・・。」
「憧れの人なの?レイちゃん。」
「は?」
「だからたえちゃんの話。毎日喫茶店通ってる理由。僕これを突き止めようと思ったから尾行したんだよ!」
渚が詰め寄るように聞いた。よもや尋問のようである。
「・・・・え゛。」
「・・・ま、そんなわけないかぁー。」
「そうだよねぇ、レイちゃん成人した年上とか好みそうだし・・・。」
「あ、それわかる。」
2人は腰掛けている椅子の背に体を預けるようにして倒れこむ。
怜が突如一切ツッコミやらヤジが飛んでこないのを不思議に思い手前でつり革を持ち立っている彼を見た。
怜はその大きな手で顔を覆い、そっぽを向く。それを見た2人はまじまじとその姿を凝視していた。
「まさか。」江は呟いた。
「・・・・・・成人した年上だと、思ってたんです・・・・!」
電車内には笑い声が高らかに二つ響くと、一斉尋問が始まったとかそうでないとか。
***
鯖は一応、買ってあったのだ。
まだ彼が鯖で釣れるとか知りもしない頃の話だ。
いや、というか元々七瀬家の冷蔵庫の鯖生存(?)率は異常なものであったが。(あと消費率も同等レベル。)
・・・が、今現在、私の買ってきた鯖はまだ、
あの鯖くさい猫にやられてはいない・・・・!!!
(ということで今日の夕飯は鯖にしよう。)
幸いまだキッチンを使うことに何か言われたり刺されたり(そんなまさか)は無いので心置き無く料理ができる。料理に必要な『さしすせそ』類もこの間ちょっと使っても特に反応はなかった。
釣れなくても鯖は別に美味しいしね。
味噌煮は辛うじて作れる。ということで味噌煮。
塩焼きも別にー・・・っていうかあんなものは正直買ってきてグリルへぽーいするものだと思っているので料理の一環と言えるのだろうか疑問符を抱いている私であった。
そんなこんなでとりあえず食事の準備を仕上げて、私は居間にある大きな机にそれを揃えた。
食器は自分が誂えたものだが、食べる場所やら生活に必要な場所だけは使っていても特に問題なさそうだ。