第1章 穴無き穴と仲間達
「つまりー・・・怜君が例の1年君で渚君が最近ここに寄り道している怜君をつけて行ってそれをみんなに教え見に行くことになりこの有様ってこと?」
「うん・・・。ごめんね、お仕事の邪魔しちゃった・・・。」渚君がしょぼんと俯きながらいった。
「別に全然それはいいんだけど。」
「・・・一個、上・・・。」怜君が私を引いたような顔で見ている。おいどういう意味だおい。
「怜さっきからそれしか呟いてないよ。」
「っていうか怜君なんで家がないとかその辺のことに何ら驚かないの・・・。」
江ちゃんの言う通りであった。
「もうそこは信じてませんから。」
「ですよねー・・・。」江ちゃんがはははと笑いながら言った。
・・・そう簡単に信じる方がおかしかったのやもしれない。
「妙美ちゃん、なんでそういえばアルバイト?」真琴君が聞いてくる。
「あ、あぁ・・・まぁ通帳に億円あって何もしないでいてもね。廃人になっちゃいそうだし。」
「学校のプール、別にいつ来ていただいてもいいんですよ?天方先生に一応許可みたいなものもらってますし。遙先輩と一緒にきてくださいよ。」
彼女の優しい言葉で、横目で一瞬彼の顔を望む。仏頂面はなんら変わっていなかった。
「勿論。」下手くそな笑顔と返事をする。
「おーい妙美ちゃん、今日はもうあがっていいから帰んな。」
「あっ、もう7:00かぁ。すいません、じゃああがらせてもらいます。」
「じゃあ僕達も帰んなきゃ!ごちそーさまでした!」渚君がスッと立ち上がって1番に会計へと急ぐ。それに続くように他も立ち上がった。
さて、私は帰りの支度しなくちゃ。
「妙美ちゃん、店の外で待ってるね。」真琴君だった。
確かに、まだ夏でもそろそろ暗くなる。男の人がいてくれるのはありがたい。
(っていうか早い話が七瀬君と一緒に帰れればいいんですけどね・・・。)
それは許されないだろう。
「わかった。じゃあすぐ行く。」
「うん。」
真琴君の悩殺癒しスマイルにまたもやられたところで、帰りの支度へと向かったのであった。
私は彼のスマイルでそろそろ死ぬ気がする。
***
「ハルー、もっとこっち来なよぉ。」