第1章 穴無き穴と仲間達
あのシャツ騒動があって以来も、彼はこうして頻繁に来てくれた。
ふ、いい鴨じゃ。
・・・なんてことは思っておらず、好感を持っていた。まるで小姑(まだいないけど。)さながらの嫌味捻くれ皮肉を悉くぶち当ててくるネチネチ野郎と思っていたけど、案外あっさりしてるみたいだ。
ガタンっ!砂糖の小瓶が盛大に倒れる。
「っ・・・貴方って人は・・・・!!」
「今回は汚れてない!汚れてないよレー君!」
「だから怜です!!!伸ばさない!!」
まぁ多少まだやらかすけど、彼の言い方が最近ツッコミっぽくなってきてこの店でちょっとした名物になりつつあった。
(因みにこのレーという伸ばし方は店長の言い方を聞き間違えてしまったが故の産物である。)
「何故そう一週間の間にそこまで粗相犯せるんです!?貴方の脳内は一体何でできてるんですか!?」
「ひぃぃい・・・。」
「ひぃいいじゃない!!!」
「わかったから、わかったから。」
「っていうか最近僕に限って失態起こすようになってきてますよね?あなたは客を選んでこういう悪質なことしてるんですか?!」
ー・・・と、その時。
ガランガランガラン!!!!
出入り口のドアに設置されていたベルが荒々しく音を立てる。
店内の客人店員全員がそちらに視線を向ける。
そこにいたのは、
岩鳶高校水泳部御一行様であった。雪崩のように全員が倒れ込み、この中を覗いていたのが窺い知れる。
無愛想以外は申し訳なさそうにこちらを見ていた。
「なっ・・・・!」しかし驚きの声を最初に発したのは怜君であった。
「え?知り合い?」
「・・・知り合い、というか、・・・渚君・・・。」
「ごめーーーん!!!ほんと、ごめん!尾行については謝るよぉぉおお!」
***