第1章 穴無き穴と仲間達
レー君、最近よく来る彼にこうして無礼を働いたのはこれで何度目のことか。まだ働き始めて日もそう経ってないのに私は一体何をしてるんだ・・・。
・・・にしても。
「・・・ま、また、をそんなに強調させることないじゃないですか・・・。」
「なんですか・・・?」まるでゴミでも見るかのような目つきである。
「ナンデモアリマセン。」
ここ数日の私はヘマをしてばかりだ。スーパーで仲良くなった店員の叔母さんや店長をお母さんと呼んだり砂糖の代わりの塩入れたりヤダ私ドジっ子★てへ★なんてザラにキャラでも無いような行為の連続。私が私に引き始めている今日この頃なのである。
こうなったのはそもそも、あの冷酷非道且つ年中無愛想のあの七瀬遙のせいといっても過言ではない!!!!!(大嘘)
兎にも角にも彼に精一杯薄っぺらくなってしまってきた謝罪をする。
「私替えのシャツをちょっと買ってきます。店長片付け頼んでも・・・。」
「・・・今月の給料からしゃっぴいとくよ。」
「・・・・行ってきます。」
初月給減給とかちょっと笑える沙汰じゃない。
ちくしょぉぉおおおおおお!!!!とも言わんばかりの形相を浮かべながら、日が落ち始めた空の下をかける。
あの一言は、相当ダメージだったみたいだ。
***
ー・・・・岩鳶高校水泳部男子更衣室にて。
「・・・最近怜ちゃん帰る道変えた?」
ドングリのような大きな瞳は、眼鏡を掛けた少年を凝視していた。
「!?・・・いえ。変えてないですけど。」
「うっそだぁー。だっていつもより降りる駅一本早いじゃん。」
「そ、そこから走り始めたんです。最近。」
「あやしー。」
渚は怪しげに怜を見る。すると怜がどこか戸惑うような顔を見せたことを察した真琴がフォローにはいった。
「凄いね怜。ストイックに自主トレして。」
「まぁ、なまると、いけないですから。」怜は髪を拭いていたタオルで顔を隠す。
「本当かなぁ〜?」
それを覗き込むようにする渚に再び真琴が入った。
「あっ、そういえば!怜はまだあの子にあったことないよね?」
「あの子?」