第1章 穴無き穴と仲間達
「何にも出てこなかった!」
「少なからず私に期待させたことを謝ってもらいたい結果だねそれは。」
「えぇえ〜。だってそういう目に会った人皆気付いたら帰ってきてたって言ってるんだもん〜。」
気づいたら帰ってた。
もし本当に私が私の知らない世界に来ているのだとしたら、待つしかないのかもしれない。
・・・って、この事について考えるのはしばらくやめるんじゃなかったのか畜生。
その後、私達は電車で少し街の方へ出て行き無事渚君の目指していた定食屋に着いたのだった。
***
「渚君・・・まだどこかいくの・・・?」
もうちょっと疲れた・・・。
食事を終えた私達は、今渚君に引っ張られている。どこに向かう気なんだろう。もう七瀬君の顔から不機嫌オーラが出てきているというのに・・・。
「水着、持ってるよね?」
「えっ。」
「練習しよ!いつ帰っちゃうかわかんないんだもん!ねぇハルちゃん!」
「俺は教えない。」
「言うと思った〜。でも泳ぐでしょ?」
七瀬君は黙って頷く。
「でも、どこで・・・。」
「学校はダメだから市民プールとかかな?」
市民プールか、確かに好きなだけ泳げるし少人数での練習にはいいかもしれない。
半ば渚君に押し切られるような感じで、彼について行くことになったのだった。
着いた先は民間のスポーツ施設。の中にあるプール。
・・・こっちで生活をして数日経ったわけだが、この近辺はだいぶ、その、田舎ちっくだな、と・・・。いやいやいや私ったらなにを失礼なことを!!!
「たえちゃんはやく!!!」
返事を返して更衣室で別れ、まだ湿気ったままの水着に着替える。
そんなこんなで、再び渚君のご指導は初まっていった。
七瀬君は相変わらずの綺麗なフォームで水中動物のように泳いでいる。それをちらりと横目で見ながらさっきの言葉を思い出した。
『俺は教えない。』
あの大量の栄光達を押入れの中で見つけ、期待していたけど・・・・。