第1章 穴無き穴と仲間達
「さぁ。学校のプールでやると思うけど、情けない話部長なのに俺何も聞いてないんだ。ごめんね。」
「そっか。」
一度、彼本人に聞いてみる必要がありそうだ。
「なんだったら、連絡先教えておくけど。」
「いいの?」
何と気が利く。彼は読心術でも心得ているのかとか思ってしまった。
「今コウちゃんから携帯借りてるんだよね?」
「うん!真琴君のも教えてもらえる?」
「いいよ。」
そんなこんなで葉月君に教えていいか許可をとると赤外線通信なんて機能を使いながら2人のアドレスを入れた。
アドレス帳に名前が増えたことが少しばかり私の心を踊らせた。
「嬉しそうだね。」
「いやぁ・・・。こっちで独り身になってどうなることかと思ってたんだけど、いい人たちといっぱい知り合えたんだなって。まぁ、七瀬君はまだどんな人か未知数なんだけど。」
「ハルはいい奴だよ。一度喧嘩したり嫌われると結構硬いタイプではあるけど。」
頬をかきながら、苦笑いでそう言う。
それってつまり一度嫌われたら一巻の終わりに近いんじゃ?とか心で聞こえたが無視しよう、プラス思考で物事を進めるんだ妙美!
これからしばらくは同居人(?)となる人間の悪を考えてどうする。
「そう心配することないよ。ね、リラックス。」
「うううううん・・・。」
「テンパり過ぎじゃない?」
ATARIMAEDA★
仮にもだって男の人と一つ屋根のしただぞ・・・?!ってなんかこれ二度目な気がする。
自分が女らしいとも色っぽいとも思わないけど、私のまだかすかーーーに、微量ーーーに残る女心がちょっとやばいとか思ってるから仕方ない。
か・・・・・考えないようにしよう。
うん、もう、やめようあの家のこと考えるの。
「あ、そうだ。ハルね、とっても泳ぐのが速いんだ。それにうちの部に一年生の男の子が入ってその子全く泳げなかったんだけど、ハルが何か助言したらすぐ泳げるようになったんだよ。」
すごい・・・、自然とその言葉が零れる。
もしかしたらという希望が現れると共に、彼に対する妙なまでの緊張と不安が少しずつ霧が晴れるようにして消えて行く感じがした。
「緊張、ちょっとでもとれた?」
「うん。ありがとう。」
根拠のない言葉が脳裏に現れる。
きっと、大丈夫だよね。