第1章 穴無き穴と仲間達
「あっ!!!」江ちゃんが突然声をあげて立ち止まる。
どうしたどうしたと私達はそちらを向いた。
彼女は鞄から小さな紙袋を取り出して、天使スマイルと一緒に私に渡してくる。
「えっ・・・?」
「これ、良かったらどうぞ。ちょっとした雑貨って感じですけど・・・仲良くなれた記念というか。」
貴様も照れ笑いの天使だったか・・・!!(感銘)
崩れた顔でうんうん頷きながらそれを受け取る。
「ありがと!うん、うん!!すっごく嬉しいよ!!」
何だか今日は気のせいであろうとも、2人とすっごく仲良くなれた気がする。
私はその手渡されたプレゼントを両手で大事そうに持ちながら、一緒に談笑を楽しんだのであった。
夕焼けがあったかい。
***
「じゃあ、私はこれで。部長、抜け駆け許しませんから・・・!!」
「どういう意味だよぉそれ・・・。」
「江ちゃんバイバイ。」
「はい。さようなら!着いたらまた連絡ください。私の番号は入れてあります。」
真琴君の苦笑を他所に、彼女は降りた駅から手を降り私もそれに応じる。
江ちゃんは途中の駅で別れ、私達はそのまま揺られていた。散り散りに人の座る電車内には双子の兄弟の楽しそうな声だけが広がっている。
「・・・ほんと、今日は色々疲れたね。」最初に口を開いたのは彼だった。
「そう・・・だね。」
「忘れよっか。」
「うん。」
向かいの席で2人が外を眺めて何やら話している。
彼の謎の能力なのか、別に無理に喋らなくとも心はやけに落ち着いていた。
「でも俺、妙美ちゃんと出会えて良かったって思ってるんだ。」
「・・・?」
「なんだか楽しくやっていけそうな気がする。」
それは能天気バカ臭がするせいなのか・・・?とか真剣に悩み出すと、彼はクスリと笑って言う。
「何と無くなんだけど、元気になるから、かな。」
「あ、ありがと・・・う?」
「そこ何で疑問系?」
電車から海を眺める。
あ、葉月君の件の事を何も聞いていない。
不意にそのことを思い出した私は、泳ぎたいという胸を伝え、いつどこで練習なのかと聞いてみる。