第1章 穴無き穴と仲間達
#7 彼女とあったかい人
「おとーさん遅いよー!」悪ノリを始める子ども達。
引っ張られていたお姉さんはやっとの事解放されると、一息付いて私に微笑む。
店は先払い制らしい。父母達はレジでお金を払い子どもと別れてでていく。
「可愛いですね。」ずっと2人を預かっていた店員のお姉さんだった。このお姉さん顔は疲れて若干やつれて見えるが、美人だ!(は)
「そうですねぇ。」
「お母様もお可愛らしくて。」
はい?
「おねーさん違うよ、この人多分おに・・・おとーさんのカノジョなんだよ。」女の子がそう言った。
はい???
「えっとありがとうございました。失礼します!」
何だって?
私は2人を俵のように抱える彼について行きながら、完全に頭をフリーズさせていたのであった。
***
「こら、蓮も蘭も!あんな悪ふざけしたらダメじゃないか。」
「えぇー、だってお兄ちゃん遅いしー。」
「カノジョ連れてるしー!」
「この子はそんなんじゃない!ごめんね、迷惑かけたよね。」
そうだね、最近の子はもうそういう話題に興味をそそるようになったのか。
こンのクソガキが・・・!
とか思いつつ己の背中に鉄拳を抑える。
っていうかまぁ真琴君はちょっとわかる(失礼)けど、私まで母親って・・・そんな歳に見えますかね・・・!?
「あ、全然!別に失礼でも迷惑でも何でもないからいいんだけど、なんか私の方こそ、ごめん。」
「えっ、あぁいや、なんていうか。」
そりゃあ困るよね。ちょっと仲良くなった女子とあらぬ誤解をされれば。
言葉に困ってあたふたしている真琴君を見てニヤついている子供たちを見ながら、さてこの巨漢をどう落ち着かせようかと頭を捻る。
鞄が震えている。着信か。
「ちょっとごめん。」
「あぁあ、うん。」
そう、今の私は最先端スマフォ持ち!!!迷子など屁でもないのだー!!!!!・・・と意気込んだところで江ちゃんに借りた携帯(江ちゃんの家に連絡の取れる一機が偶然にもあってお借りしているもの。)を取り出して画面を見る。
勿論料金は自腹。
おや、非通知?
「もしもし?」
『あの、財布の持ち主なんですけど。拾ってくれた方ですよね?』
おっと男の人だ。中世的な声ではあるが、この私にははっきりとわかる。(自信)
「はい。」