第1章 穴無き穴と仲間達
私達はあの後、30分程の談笑で時間を持て余した。まぁ内容はありきたり。でも身近な話題こそ親近感を作って行くものなんだなぁ。
仲良くなれたみたいでよかった。独りよがりではない、断じて!←
「あっ、俺お迎えいかなきゃ。」
「良ければ私もついていっていいですか?まだ待ち合わせに時間があって暇だし、蓮君と蘭ちゃんですよね、会ってみたいなーと。」
小学校三年生の、双子の兄弟。真琴様がとても楽しそうにその話をしていたから、つい口走ってしまった。
「うん、構わないよ。じゃあ行こうか。」
彼の通常装備の笑顔に笑い返して、2人でお迎えへと向かった。
***
「あのさ・・・妙美さん。」
2人で並んで会話をしていると、彼が唐突に切り出した。
「はい?」
「敬語じゃなくてもいいんだよ?同い年だし、俺は、その、もう仲良くなったと思ってるから・・・。」
恥ずかしそうにそう告げる真琴様。
・・・やだ可愛い!頑張って、勇気を振り絞って言ったかのような照れ笑いが犯罪的な可愛さである。
「そ、そうだね!うん。敬語、やめる。ちょっとまだ慣れないかもしれないけど。あっ!じゃあ、橘君もさん呼びしなくてもいいよ。」
「なら、妙美ちゃんも苗字呼びなんてしないで?」
「ま、真琴・・・君は、まだ付けててもいい・・・?」
「仕方ないなぁ。改めて、しばらくよろしくね、妙美ちゃん。」
「うん!」
こういう会話ってー・・・心底恥ずかしいよね!!!!でもしたらしたで、より仲良くなった感じがして少し嬉しいのも確かだ。だが、何かこういう会話の直後は大体お互い喋りにくくなるという謎の現象付きである・・・。
2人揃ってぎこちなく会話を続けていると、目的地へたどり着いていた。
どうやら待たされていたらしい2人が、店員のお姉さんを引き連れて出てくる。不服そうな顔は一斉に真琴に向けられた。
「遅いー!」声を揃えて言う。
「お父様ですか?2人ともとってもいい子で待ってましたよ。」
「え?いや、俺は、」
ブフォッ。勝手に親になってる。焦る真琴君。面白くて吹き出してしまった。