第1章 穴無き穴と仲間達
「・・・煩い。近所の人から苦情来ただろ。」
苦情の対応に追われていたのか・・・。怪訝そうな彼につい同情の目を向けてしまう。
「・・・ああ、ハル・・・。」
「ハルちゃんお帰りー。遅かったね。」
「遙先輩・・・。」
彼の登場で焼け石に水にはならず、石達はすっと冷えるのだった。
静まり返った居間に入り、私の横へとやってくる。
「これ。」
「・・・?」
七瀬君から差し出されたものを受け取る。
「私の財布・・・!!」
三人組のえぇっ!という声が聞こえた。
財布を開けて中にみると、印鑑、見覚えのない通帳そして私の保険証が入っていた。保険証があるのは助かる。未成年(かつ現在孤児)の私にとっては重要な身分証明だ。でも住所部分が、見たことのない場所だ。
とりあえず「どこに」、と問う前に「男子更衣室。」と彼が言う。その答えに三人組(1人は黄色い声)が木霊した。
***
三人組を七瀬君が睨んで制し、今日のところは解散となった。
江ちゃんが親切にも「あ、そうだ。あの件(下着)もありますし今日はうちに泊まりますか?」という女神のような助言をしてくれ、尚且つ彼女が連絡を取るとすんなり彼女の両親もそれを承諾したようだった。私は天にも登るかのような気持ちで彼女に抱きつくという行為をして跳ねるように七瀬家を後にした。
今はその道中ー・・・。
「妙美さんは、水泳やってたんですか?」
「え?あぁ、まぁ・・・うん。」
「好きですか?泳ぐの。」
「うん、多分好き。ー・・・あ、ねぇ、なんで江ちゃんはマネージャーやってるの?」
「"ゴウ"じゃなくて"コウ"です。・・・まぁその家庭の事情というか・・・兄が心配な妹ゴコロってやつなんですかね・・・?」
少し照れ臭そうに笑う彼女。(可愛いとかやっぱり思ったが内緒だ。)
視線を外してくるところから、あまり聞いてはいけないのかなと己の問いに不安になる。
「あ、ごめん・・・。聞いちゃいけない感じかな。」
「いいえ全然!!!別に言う必要も無いのであんまり人に言わないし、こう言う瞬間が来たらきたで少し恥ずかしくなっただけです。」
彼女はははと笑って顔をかき、困ったように微笑して見せた。