第1章 穴無き穴と仲間達
「いまいちまだ妙美さんがどうやってこうなったのかわかってないんだけど・・・。自分の学校のプールに忍び込んで、泳いでたんだよね?」
「はい。」
上がったのちシャワーを浴び、すると急に視界がボヤけていって眠くなり、体が浮くような感覚に襲われ目を閉じたのだ。
男子更衣室である理由は、忍び込めるようやんちゃな男子達が扉に細工していたからだ。
「で、こう水の中にいる感じがして息をしたらそのまま溺れました。」
「やっぱり誰かに襲われたとかかなぁ・・・?」
葉月君が眉を顰める。
「家が無くなってるのも変だよね・・・。」
真琴様と葉月君はうーん、と腕を組んでいた。
私だって自分の状況がちゃんと理解できないし、どうやって対処したらいいかわからない。家が無くなってるっていうのが1番奇妙だ。
「っていうか、何でプール行ったの?」
唐突なその質問に、私は一瞬固まった。
所謂ー・・・私は、弱小部員。団体戦個人戦共に、コーチの許しがなければ出られない故に、私は一度もレギュラー入りしたことがなかった。
でも泳ぐのは嫌いじゃなかった。塩素の臭い刺激臭が地味に好きだったり、水面が太陽の光でキラキラしたりするのを見るのは最高だった。
だから、だから私は、暇さえあれば夜に学校のプールで練習をしていた。もう部に入ってからずっと。
「私、自分の部の弱小部員ってやつで、あ、でも!泳ぐの嫌いじゃないし、だから練習しに行ってました。」
「へー、水泳部なのか。」
「あ!!!!」
葉月君が何やら閃いたように立ち上がり一回手を叩く。皆の視線がそちらへ向いた。
「じゃ、じゃあーさ!家に帰れない間、妙美ちゃんも練習しない!?僕たち水泳部なんだ!」
「それいいね。・・・ん?でも、うちの学校の生徒じゃないんだよ?」
「天ちゃんに聞けばいいじゃん!どうせ僕達以外は怜ちゃんとゴウちゃんしかいないし、2人なら許してくれそう!」
自信ありげにそう言い張る。
いやそういう問題なのか・・・・?と半ばその提案に疑問符だったが、彼が張り切る様子を見ているとなんだが嬉しくなっていったのだった。
(うん、水着もあるし、いいな・・・。)
みんな経験者なら、何か学べそうだ。