第1章 穴無き穴と仲間達
「ねぇ、ちょっと。おい。」
誰かが私を揺すっている。
私、案外危機的状況でもどこでも寝れるんだなぁ。
目覚め際にそんなことを思った。
#4 ディープブルーの事情
「あ、七瀬君・・・。」
「涎。」
と口元を指差され、私はそれを拭った。
床に垂らされてないか気にしていたようだったが、その跡が無いのを確かめるとスッと立ち上がった。
失礼な・・・、百歩譲ってこちらも乙女。他人の家の床に涎など垂らさぬ!!!
別に涎を操れるとか器用な芸当があるわけでもないけど。
なんていう笑えない1人コントを繰り広げながら、私も立ち上がる。
「先生のところ。」
彼はそうとだけ、私に告げた。
「それで今からどうするの?」
彼はカバンを居間に置いて、私の質問に答えずスタスタと再び家を後にした。ムッとなったが気を取り直して今度は私も後ろに続く。
玄関では今朝見た2人がヤッホーといった気軽さで待ち構えていた。思えば3人共制服のまま。まさか私を優先してくれたからだったとかなら申し訳がない。見ず知らずの他人にここまで親切にしてくれるなんて日本は捨てたもんじゃない。
「天ちゃん先生ならまだ学校だよ。そのうちこっちにくるって。」葉月君が2人を交互に見ながら伝えた。
本当にあのトンデモ不思議ちゃん先生は手伝ってくれるみたいだ。
(あんだけキラキラしてたんだし・・・まぁそうだわな。)
「・・・うちに上がるの?」
「ちょっと早い家庭訪問だと思ってさ。」
真琴様が七瀬君を宥める様に言った。その一言で渋々ではあったものの私達を中へ入れる。
「あの、なんだかすいません。付き合わせちゃって。」
「好きでやってるからいいんだよ!なんか楽しそうだし!!」
葉月君もあの時の天ちゃん先生同様、童顔に最高に似合う目の輝きを見せていた。
もうこの際おもちゃでも何でも帰れるなら何でもいいと思い始めていた。しかしその反面、全く関係のない彼らにこんなことを頼んでいいのかという不安もあった。
(いいや、飽きられたと思ったら私から離れればいいしね。)
しかしそのあと独りになった想像をすると身震いがして、その考えはすぐに奥へとしまいこんだ。
***
「とりあえず、さ。」
真琴様が徐に呟く。
私達は居間である場所の大きなテーブルを囲んで座った。