第2章 新しい景色達
今ひとつやっぱり・・・何か足りてない感じがしてならない。自分の泳ぐフォームが見れないから、何とも言えずもどかしい気持ちをもて余す。
私ってとことんセンス無いのかな・・・と、立ち上がった水面に顔を沈めてみる。
プール内の色はやけに綺麗だ。澄んだ海を彷彿としなくもない。多分壁が青で塗ってあるから。そういえば、まだ水泳部って出来たばっかりなんだっけ?全く剥げた気配のないそにプールの壁は、一層水の色を映えさせているように思える。
悩んでいても埒が明かない、そう思い、水面から顔を出してゴーグルをとった。
出ようと見上げた先には、優しい笑顔の彼がこちらをしゃがみこんで見ていた。私と目が合うとにっこりと微笑みかけてくる。少し焼けた肌と、落ちる水滴、そして陰った顔に浮かぶそれはまさに水も滴るなんとやらだった。
「あ、ま、真琴君」
ある種風景のような彼の表情にやっとこさ声をかけた。
「不思議なことしてたから気になっちゃった。何してたの?」
「ああ・・・プールの中をちょっとだけ見てた」
彼は少し驚いた顔をする。
「へぇ。どうして?」
「なんか・・・綺麗だなーと・・・」
「確かに。あ、上がらなくていいの?」
彼の言葉でプールから這い出た。
「最近すっごく練習頑張ってるね。俺も見習わなきゃ」
「そんなに頑張ってたかなぁ?」
「うん、泳ぐたびに真剣そうな顔してるから」
そういえば前は、顔がこわい・・・とか言われてたなぁ。
もしや彼が気遣ってくれてるのではと、自分の顔は怖いか聞いてみる。
「え、怖い・・・?怖い感じはしないけどなぁ。なんかこう・・・応援したい顔っていうのかな・・・」
彼が私の表情の説明に困り、言葉を必死に探してくれていた。
応援したい顔・・・私も一歩ずつではあるが、成長していってるんだろうか。
(だったら、嬉しいな)
前向きな今を考えるだけで自然と楽しさに口許を上がった。まだ彼らの手を借りながら、にはなってしまってるけど、それでも無下になどしていない。それだけは根拠も無いのに確信出来た。