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イルカとアリス 【free!/ギャグ/遙オチ】

第2章 新しい景色達


「あ、ああ・・・えっと・・・いや、特に何もなかったんだけどね、うん・・・」

「そっか・・・じゃ、練習しよっか」


真琴君がにっこり笑った。どうやら言いたくないことと察せられたらしい。しかし・・・言いたくないわけでもないが、何せ下らない。


「えー!」

「渚」直様真琴君が制す。

「う・・・はーい」


そうして彼らは散り散りになった。
江ちゃんは屈むのをやめてしっかり立ち上がり、私の手を取ってベンチから立たせる。


「今日もこの練習メニューでいきますか?」


ああ、ああそうだ・・・私ったら今朝あんな大それたことを七瀬君に言っちゃってたんだった。彼の善意(?)の真相なんかより、まず自分の目標を達成せねば。


最近、タイムが縮んで行くのが手に取るように分かって嬉しい。

(単に・・・江ちゃんのおかげかな)

よく考えれば前は突っ張って、見事にマネージャーにも見放されてたなーと思う。私は頑固者だったはずだが、ここに来てそれを見せたことはー・・・。

いや、何度か怒鳴って飛び込む姿は、あの頑固だった時の心を具現化したものに等しいな・・・。
思わずクスリと笑った。


江ちゃんはメニューの確認を待っていたのに笑い声がして驚いたのか、目をクリクリさせてこっちを見ていた。


「どどうかされました?」パチパチする長い睫毛が次第に不安そうに下がる。


「ごめん、ちょっと今が幸せで」

「そうですか・・・?」


私から突然でた言葉に少々戸惑っている江ちゃんを見て、思わず頭を撫でた。


「!?」

「ありがとう、何から何まで」


こうして仲間と何かをすることや、逆にされることってこんなに満ち足りた気分になれるんだなぁ。
私の顔がほころんでいく。
江ちゃんは恥ずかしそうに目を泳がせて、「い、え・・・」とぎこちなく返して来た。時々上目遣いをしてくる視線にちょっとドキドキした。(ヤバい)


***


今日も今日とて、3000m近く合計で泳いでいる(気がする)。
手も足も、胴体の捻りまでも意識を通わせる。バタ足は大きくせず、極力使う力は腕・・・。


(・・・と分かっているものの・・・)


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