第1章 穴無き穴と仲間達
「あ、よろしくお願いします。そうですね、心配です・・・。」
「そうだよねー。心配だよねー・・・。マコちゃん、先生に相談って、天ちゃんに相談するの?」
七瀬君が何やらブツブツ言っているのが非常に気になったが、真琴様がこちらを振り返りそちらに視線を向けた。
「そのつもりだけど。もしかしたら家が見つかる間この子を泊めてもらえるかなと思って。」
天ちゃん先生とは女の先生なんだろうか。多分そういうことまで考慮していそうだ。真琴様ほんとイケメン。
気が付くと、おはように溢れた学校の校門近くに来ていたのが分かる。注がれるというより刺さるに近い視線たちに顔の角度も下がって行く。
(恥ずかしいなぁ・・・。)
そりゃあ唐突にジャージの少女が入ってきもすれば驚くのは当然だ。分かってはいるが、顔は徐々に火照って行く。
「早く行こう!」
「えっ!?」
葉月君が突然私の手を強引にとって走りだした。小柄な少年に体を引っ張られている。しかし手から伝わる力は結構強い。そのギャップに少し心臓が鳴るのを感じた。
(私って単純・・・。)
葉月君を先頭に、4人で大勢を割るように走った。模倣のような青春の姿に、私は少しだけ口元を緩めたのだった。