第1章 穴無き穴と仲間達
さて、ところ変わって通学路。私が昨晩歩いた道を三人で歩いた。真昼間からジャージである私は、まるで怠惰な生活を送る人間に見える。そういえば、塩素入りの水(即ちプール)に入ってからというものまともにシャワーを浴びていない。髪だってちょっと質が悪い感じするし・・・。
(うう。)
そんな心配をして2人と少しの距離を開けて歩いていると、どうやら七瀬くんが真琴様にちゃんと事情を話したらしく。「えええ!?」と驚きの声を上げていた。私は驚きを通り越し若干泣きたいよもう。
「ハル、あの子にシャワーくらい使わせてあげたらいいのに!」
「俺が入ってたし。」
「後だってよかったじゃん!」
「あっちが勝手に出てった。」
・・・・・・・・。
何を嘘ついてんだこら。貴様が眠いとか言ってたからだろ。という怒りがふつりと沸くが、ジャージをぎゅうとにぎりしめて我慢する。
拳を握っていると、真琴様がこちらを向いた。
「ねぇ、体気持ち悪くない??」その心から心配そうな顔だけが私の唯一の救いかつ癒しだ。私は「ちょっとだけ。」
「お風呂入れるといいよね。俺たち学校だし、何にもできないかもしれないけど・・・。ごめんね。」
真琴様ぁぁぁあああああああ。
「おっはよー!ハルちゃん、マコちゃん!」
私が真琴様のお言葉にほんわかしていると、どこからか中性的な声が飛び込んできた。
その子は2人の背中に飛びつくようにやってくる。2人に比べ随分と小柄だ。
「おはよー。」真琴様が笑って返す。
七瀬君は何も言わず、己が向ける視線を変えることはなかった。さっきから見ていて思うのは、七瀬君はどうやら少し仏頂面がお得意のようだった。マイペースで周りを振り回すのがうまそうだ。
すると、その小柄な少年はチラと私を見る。その子の童顔な少年的顔は、どこかキョトンとしていたがじきにニコリと笑みを見せてきた。彼もまた2人から私についてを聞いたのか再び夏らしき青空に驚きの声が響き渡った。
そしてその子は私の隣へとやってくる。
「だ、大丈夫!?心配だよね、お家がどこにあるかわかんないんでしょ!?あ、僕は葉月渚。ハルちゃんとマコちゃんの友達!」