第6章 あなたは天使ですか?
『あー…なんていうかな』
『…はい』
『ほら、アレだ』
『…?』
『綺麗だな……と思って』
『綺麗…?』
『シュートフォームが!!』
三井が慌てて言葉を付け足す。
すると少女は心底嬉しそうに、表情をパアッと明るくする。
『本当ですかっ!?』
『………!!』
少女のいきなりの満面の笑みに、心臓を貫かれるような感覚に陥る三井。
『う…嬉しいです!!』
『俺はバスケ部三年の三井寿ってんだ、お前は?』
『私は三浦渚っていいます』
やっと聞けたあの子の名前。
心臓がバクバクうるさい。
『そか…よくあの公園で練習してんのか?』
『はいっ…!早朝だけですが』
『そうなのか…バスケ好きならたまにバスケ部見に来いよ』
『いいんですかっ!?』
渚の表情がまた一段と明るくなった所で、
昼休み終了のチャイムが鳴り響いた。
『あっ…もうこんな時間…それじゃあ私、戻りますね』
『おう』
『あの…怪我、一応病院で見てもらって下さいね?』
そう言うと渚は小走りで保健室を後にした。
『(やべぇ…思ってた以上にいい子だ……
マジで俺に春が来るのかもしれねぇ…)』
三井は保健室内に誰もいないのを確認して、ガッツポーズをとる。
この後起こる波乱の予感を1ミリも感じずに。
続く