第18章 言いたかった言葉
『渚』
『ん?』
『どこにも行くな』
『え?…ん?』
渚は首を傾げて、頭の上に大量のはてなマークを浮かべた。
流川にとっては渚のそんな仕草も愛おしかった。
『お前、最近変わった』
『私が?変わった?』
『そのせいでお前がなんだか遠ざかっていく気がした』
『そんなの…私も同じこと思ってたよ!!』
『!』
珍しく声を荒げる渚に驚きを隠せない流川。
『楓くんがどんどんバスケ上手くなって、
前に進んでいって、遠くに行っちゃうような…』
『俺はどこにも行かねー』
流川のその言葉を聞いてホッとしたような顔をする渚。
『きっとバスケがある限り、私達が離れることはない…よね?
だって唯一の共通趣味だもん』
『バスケがなかったらお前はどっか行ってしまうのか』
『…バスケがなくても私と仲良くしてくれる?』
『たりめーだ』
『良かった』
気が付くと辺りは暗くなってきていた。
『帰るか』
『うん』
そう言って歩き出す渚を、呼び止める流川。
『渚』
『ん?』
『その髪型………似合ってる』
『……!!』
『…そんだけ』
そう言うと流川は頬をポリポリと掻いて自転車に跨る。
この後、いつものように流川の自転車の
後ろに乗せてもらった渚だったが、
赤面したまま顔を上げる事が出来ず、終始無言だった。
続く