第17章 ちょっとドキッとしちゃうじゃん
今の流川には何を言っても駄目だろうと思った渚は、
おとなしく差し出されたドリンクの飲み口を咥えた。
『…おいしい…生き返った』
『ん』
流川は納得したように頷いた。
『……眠くなってきた』
『寝ろ』
流川の言葉は終始ぶっきらぼうだったが、
今はそれが妙に落ち着いて心地良かった。
安心したのか渚はそのまま目を閉じ、ぐっすりと眠った。
―――
『…ん…ふぁ』
次に目を覚ますと、さっきよりは少し回復した感じがした。
ベッド横にはまだ流川がいるようだった。
『喉渇いたー…』
『ん』
差し出されたのは今度はペットボトルのポカリで、
また買ってきてくれたのかと思うと少し申し訳ない気持ちになった。
キャップを開け、ゴクゴクと喉に流し込む。
ポカリの冷たさが身体全体に染みるようで気持ち良かった。
『…楓くん、ありが……と!?』
ペットボトルを渡してくれた方を見ると、
そこにいたのは流川ではなかった。
『三井先輩!?』
ベッド横にいたのは三井だった。
渚は無言でゆっくりと布団に潜り込んでゆく。
『…あの…すいません…楓くんかと思って話してました…』
今ので体温がまた何度か上昇したような感じがした。
『気にすんな、それより体調大丈夫か?』
布団の向こうから聞こえてくる声は
あまりにも優しくて、涙が出そうになった。
『…はい…だいぶ楽になりました』
渚は恐る恐る布団から顔を出して小声で話す。
『顔、真っ赤だぞ』
『(先輩のせいです…!)』
『勝手に来てすまねぇな』
『そっ!そんな!…わざわざ来てくれて…ありがとうございます!』
『彩子が部活後に行け行けってうるさかったからな』
そう言いつつも内心、渚の事が心配で心配で仕方がなかった三井。