第2章 赤毛のキューピッド
『う~む…いないな』
昼休み、三井は例の少女を探すべく、校内をうろついていた。
『おお、ミッチーじゃないか!』
背後からふと能天気な声が聞こえ、振り返るとそこには
同じバスケ部の一年、桜木花道が立っていた。
『桜木…』
『こんなとこで何やってんだ?』
『…』
三井は考えていた。
例の少女の事を桜木に話すか話すまいか。
こいつにこの話をすると、絶対からかうに決まっている。
でももし、桜木が例の少女の事を知っていたら?
50人もの女子にフラれた桜木なら、
その少女の事を知っているのでは?
三井の脳内ではいろんな考えがグルグルと巡る。
『なぁ、桜木』
『あ?なんだよ、真面目な顔して』
『…バスケが上手い女子を知らないか?』
『はぁ?バスケが上手い女子?』
『こう、黒髪で大人しそうな感じの…』
三井が必死に身振り手振りで説明する。
『知らねぇ』
どかーん。
三井の脳内大爆発。
終わった、最悪のパターンだ。
こいつ絶対この事、言いふらす。
すると案の定、桜木はニヤリと笑う。
『…ミッチー、もしかしてその女子の事が…』
『…もういい、お前に聞いた俺が馬鹿だったよ』
三井が何か言われる前にその場から去ろうとした時だった。
桜木が三井の前に回り込む。
『まぁ、待ちたまえよミッチー』
『んだよ…』
『俺がそのバスケ少女とやらを見つけ出してやろう!!』
『…は?』
てっきり大声でからかわれるだろうと思っていた三井はつい間抜けな声を出す。
『だから!この天才桜木が恋のキューピッドになってやろうと言っているのだよ!』
『あてはあるのか?』
『ない!』
桜木が自信満々に胸を張る。
その自信は一体どこから来るのだろうか疑問だった。
『まぁ、とにかくこの天才に任せたまえ!!
必ずミッチーに春を訪れさせてしんぜよう!!』
『お、おう…』
力無い返事をした三井だったが、桜木なら何かやってくれる、そんな気がしていた。
『ちなみにどうやって探す気なんだ?
バスケやってるかどうかなんて見た目じゃわからないし…』
『そんなの、片っ端から聞いていくに決まってるだろ?』
『(うわぁ…原始的だ…)』
やっぱりこいつ駄目だ、そう思った三井は
桜木を放置して教室へと戻った。
続く