第16章 さよなら、昨日までのわたし
『お前、バスケ向いてない』
―――その言葉が私の心のどこかに突き刺さったまま抜けないでいた。
―――その言葉を言った本人は私より遥かにバスケが上手で。
―――私は何も言えなくて下を向いた。
『渚!渚ってば!』
『えっ!?な、何!?』
気が付くと彩子が渚の肩を揺すっていた。
『どうしたのよ、ボーッとして』
『いや、何も…』
『そう?ならいいけど』
言葉では何でもないと言ったが、
渚の様子がおかしいのは一目瞭然だった。
溜息をよくつくし、ずっと何か考えているようだった。
そしてその様子を気にしていた少女が一人。
『渚さん』
渚に声を掛けたのは、赤木晴子。
キャプテンの赤木剛憲の妹だ。
よくバスケ部の練習を見に来ている。
『あ、晴子ちゃん』
『何だか元気がないですね、どうしたんですか?』
晴子はニコリと天使のような笑顔を浮かべる。
『大丈夫だよ、心配しないで』
渚も無理に笑ってみせたが、その笑顔を作るのは苦しそうだった。
―――
『渚さん!』
渚が着替え終わり、帰ろうとしていると晴子が話しかけてきた。
『どうしたの?』
『あの、もし良かったらこの後、一緒に遊びに行きませんか?』
『えっ?遊びに?』
『はいっ!場所は行ってみてのお楽しみです』
そこへ彩子もやって来た。
『あら、二人でどこか行くの?』
『彩子さんも一緒にどうですか?』
『いいの?』
『はいっ!』
こうして部活終わりに女子三人組は遊びに行く事になった。