第14章 あだ名で呼びたいの
『そっ!そんなの無理だよっ!私にはレベル高いよっ!』
『いけるいける!さっきみたいで大丈夫だから!』
『いや…でも…』
渚が渋っていると宮城が大声で三井を呼んだ。
『三井さーん』
『何だ?』
水分補給していた三井が小走りでこちらへ向かってくる。
『ほら、行った行った』
宮城がニヤニヤして、渚の背中を押す。
『三浦?どうしたんだ?』
渚が三井を見上げながらモジモジする。
『……あの…その…』
『?』
『あの~…~』
『お、おう』
『………ミッチー…先輩』
渚がやっとこさ言葉を振り絞った。
三井は一瞬フリーズしたが、みるみる内に真っ赤になる。
『あの…あの…すいませぇぇん!!』
その場にいるのが恥ずかしくてたまらなくなった渚は全速力で逃げ出した。
『あひゃひゃひゃひゃ!見ろよ花道!
三井さんのあの顔!!』
『これは傑作だぜ!耳まで真っ赤!!』
遠巻きでその様子を見ていた宮城と桜木は腹を抱えて笑い転げる。
それに気が付いた三井はズンズンと二人の元へと向かう。
『お前ら…!!』
三井が拳を握り締めて今にも二人を殴りそうになる。
『お、落ち着いて下さいよ!三井さん!』
『そうだぜ!俺たちのおかげでいい思いできたんだから!』
『そうだそうだ!』
三井は一度落ち着くため、深呼吸して拳をおさめる。
『…三浦に何言わせてんだよ』
『いやぁ、渚ちゃんがあだ名がどうとか言ってたから』
『そうそう!あだ名で呼んだ方が親しみやすいかなぁと!』
『まぁ……………めちゃくちゃ可愛かったけど』
『だから、俺に感謝してくださいよ三井さん!』
宮城がえっへんと胸を張る。
『アホ、無理やり言わせたんだろうが、どうせ』
『へー、三井さん優しいんすね、不良の癖に』
『不良は余計だ』
『ああ~…俺もあだ名で呼ばれたかったぜ』
桜木が残念そうにしょげる。
『花道のあだ名ってなんだ?赤頭?ニワトリ?』
『ぬおー!!バカにしてんのか!!リョーちん!!』
理不尽な辱めを受けて、非常にいたたまれない渚だった。
続く