第14章 あだ名で呼びたいの
『桜木くんはいいなぁ…』
バスケ部練習の休憩中に渚がボソッと呟いた。
『何がっすか?』
『なんか…先輩たちと気兼ねなく話せてるなぁって…』
『そっすかねー…』
『私、なんか男の人と話すの緊張しちゃって…』
『ん――…なら、あだ名で呼んでみるのはどうですか!?』
『あだ名…』
『少し距離が縮まる感じしないすか?』
『……やってみたい』
『じゃ、じゃあ俺の事もあだ名で…』
桜木がそう言いかけた時だった。
『二人でなーに話してんだよー?』
二人の間に割り込んだのは宮城だった。
『む…リョーちん』
桜木が面白くなさそうにムスッとする。
『今、あだ名の話しててね…!』
『ほうほう』
『あだ名で呼ぶと仲が良さそうでいいよねって』
『なるほど』
宮城が渚の話を聞きながら頷く。
『じゃあ俺の事、あだ名で呼んでみてよ』
『ええっ!?』
『リョーちんって』
『あの…心の準備が…』
『大丈夫大丈夫!一回呼ぶだけだから』
宮城が気楽に笑う。
『……………えと…リョーちん…?』
渚が恥ずかしそうに顔を真っ赤にしながら宮城をあだ名で呼ぶ。
『…………なんか…いいな』
『コラァ!!デレデレするなよ!!リョーちん!!』
桜木が羨ましそうに宮城をポカポカと殴る。
すると宮城が何か思いついたように渚を呼ぶ。
『渚ちゃん、ちょっと』
『?』
宮城が渚に何かコソコソと話す。
すると渚がまた顔を真っ赤にして慌てる。