第12章 マネージャー連れ去り事件
―――
三井は渚の腕を掴んだまま、校門あたりまで走った。
『…っ、あの…三井先輩…?』
『あ…ああ…悪いな、いきなり』
『その…腕が…』
『す、すまん!!痛かったよな!?』
三井が、握っていた渚の手を離す。
相当強い力で握ってしまっていたようで、
渚の腕には少し赤い痕が付いていた。
『私は大丈夫です!
あの…三井先輩、どうかしました…?』
『えっ…?』
『なんか…焦ってるみたいな感じがしたので』
『まぁ…気にするな』
三井は自分が焦っているのが、渚にまでバレるほど
わかりやすかったのかと自分を責めた。
『あの…三井先輩がよければ、今から公園行きませんか?』
『公園って…』
『私と三井先輩が初めて会った場所です』
『あ、ああ!俺は全然いいぞ!』
『えへへ…良かった』
―――
二人が公園に着くと運良く、バスケットゴールは空いていた。
『あの…私、1on1がめちゃくちゃ下手なので…
その、相手してもらってもいいですか?』
『おう、いいぞ!』
そう言うと三井はディフェンスの構えを取る。
『では…い、いきますっ!』
渚はそう言うと、低めのドリブルでゴールへと向かっていく。
三井は部活動の練習でもやっている通りにディフェンスをする。
『あっ…!!』
渚は三井のディフェンスをかいくぐれず、ボールを弾かれる。
『…もう一回、お願いします』
その後も何度か1on1したが、渚は一度もディフェンスを避ける事は出来なかった。
『1on1、本当に苦手なんだな』
『はい…そうなんです、なんていうか…どうしても怖くて』
『怖い?』
『ぶつかっちゃったりしたらと考えると…』
渚の性格から考えても、しっくりくる理由だった。
『とにかく!今日は練習に付き合ってくれてありがとうございました!』
渚は三井にペコリとお辞儀をした。
続く