第12章 マネージャー連れ去り事件
三井寿は悩んでいた。
渚が湘北バスケ部のマネージャーになってくれて、
話す機会も増え、割と仲も良くなって、
いいことずくめで、毎日の学園生活は薔薇色だったのだが、
最近少し雲行きが怪しい。
『帰るぞ』
『あ、うん』
渚の幼馴染み、流川楓の存在だ。
『(こいつが地味に俺の恋路を邪魔してやがる…)』
三井はむむむと眉間にシワを寄せる。
部活終わりは、二人は帰り道が同じなので一緒に帰るし、
昼休みも一緒にいることが多いようだ。
『三井さんー…なんて顔してるんすか』
『いや…こんな顔にもなるだろうがよ』
話しかけてきた宮城に、半ギレ状態の三井。
『アイツが邪魔だっっ!!』
『確か幼馴染みなんすよね?
男苦手な渚ちゃんも流川には心許してるみたいですし』
『それなんだよな、流川も何故か最近、三浦にべったりだし』
『流川の方は実は渚ちゃんの事、好きだったりして』
宮城が冗談っぽく言うが、三井はそれを真に受けてプルプル震える。
『な…なん…だと』
『いや、今の冗談すから』
『でも100%なくはないだろ!』
『そうっすけど…』
『一体どうすればいいんだ…俺は…』
三井が頭を抱えてうんうん唸る。
すると宮城がまたもや冗談半分で提案した。
『もういっそのこと、強引に奪っちゃうってのは?』
『それだっっ!!』
『…え…』
『あの鉄壁の流川から渚を引き離すにはもうそれしかねぇ!』
三井は拳をギュッと握り締め、天に叫んだ。
―――
次の日の部活終了後。
『渚、帰るぞ』
『うん』
いつも通り、渚と流川が一緒に帰ろうとする。
そこへすかさず三井が割り込む。
『ちょいと待て!!』
『…!?』 『三井先輩…?』
『三浦!』
三井は渚の腕を掴み、全力疾走してその場を去った。
残された流川はただ呆然としていた。
『…なんなんだ一体』