第10章 変なTシャツを着ている人に悪い人はいない
彩子がニヤニヤしながら、赤木に近づく。
『…む、何だ』
『(…なんか、嫌な予感)』
赤木、木暮、渚が、ゴクリと唾を飲む。
ついでに空気になりかけていた三井も。
『渚を我がバスケ部のマネージャーにするのはどうでしょう?』
『えええーーーーっ!?ちょちょちょっ!!彩ちゃん!?』
渚は思わず大声を出して彩子にすがりつく。
『いいじゃない、渚どうせ帰宅部でしょ?』
『そ、そうだけど…』
『(俺の言いたいことを彩子に言われてしまった…)』
三井が複雑な気持ちでいると、彩子がまくし立てるように言う。
『渚は恥しがり屋だけど、真面目だし、絶対マネージャーに向いてると思うの!!
それにバスケ経験者ってのもポイント高いわよね!!
あと、女子が一人増えるだけでも部員の士気も高まるハズ!!』
赤木までもが彩子の熱弁に圧倒されていた。
『…三浦はどうなんだ?』
『…あの…私は…』
渚は恥ずかしそうに下を向いてモジモジしていると木暮が優しく声をかける。
『正直に言っていいぞ?こういうのは本人の意思が一番だからな』
『私は…今日の練習風景を見て、すごく…いいなって思いました…
みんな…本当にバスケ大好きなんだなって…』
渚は途切れ途切れだがしっかりと自分の考えを言う。
『私もバスケ大好き…だから…
だから…私もそんな皆の力になりたいです…!!』
渚は顔を上げてしっかりと言った。
そんな渚を見て、三井はまたドキリと心臓が跳ねる。
『それは、マネージャーをやってくれるという事なのか?』
『はい!…自信はないですけど、自分に出来る事は精一杯します!!』
『よく言った!!渚!!よーしよしよし!!』
彩子が渚の頭をクシャクシャと撫でる。
『ちょ…!!彩ちゃん…!!』
『マネージャー業は彩子一人に少し負担がかかっていたんだ、助かる』
『確かに。元気すぎる一年も入ったしな』
赤木と木暮も渚がマネージャーになる事に賛成のようで、渚は内心ホッとしていた。
『あの…私、頑張りますね!』
渚はそれだけ言うと、にこりと笑った。
続く