第8章 ある晴れた日のこと
『楓くん、この前はごめんね』
『…ああ、別に』
昼休み、渚と流川は中庭の日当りのいい場所で日向ぼっこしていた。
『三井先輩って人に部活見に来いって言われちゃった』
『…ふーん』
『三井先輩ってどんな人?』
『……体力ない、ケンカ弱い、不良(元)』
『………わざと悪いとこばかり言ってる?』
『別に』
流川がプイとそっぽを向く。
『……腹減った』
『お弁当食べよっか』
渚はカバンから弁当箱を二つ取り出す。
一つを流川が受け取り、カパッと弁当箱を開く。
『……トマトばっか』
渚が作った弁当はバランスはよさげだったが、野菜はトマトばかりだった。
『トマト…おいしいよ?』
渚はそう言うと、パックのトマトジュースにストローを差した。
その様子を見た流川は、げ…と引きつつも弁当を食べる。
『(なんだかんだ言って、食べてくれるんだよね楓くん)』
あっという間に弁当を食べ終えた流川は早速昼寝を始めた。
『食べるのはやいなー…寝るのも』
流川を見るとすでに、すかーと寝息を立てて眠っていた。
『(寝顔…可愛いなぁ…)』
渚は流川のサラサラの前髪をそっと撫でた。
近くで見ると、まつ毛が長いのもよくわかる。