第5章 絶望。
彰人はニヤリと笑うとそのページを音読し始めた。
~年~月~日 葉月琴乃は出生した。
この約1年前、葉月琴乃の母である葉月希恵(旧姓:木原希恵)は父である葉月哲夫ではなくその弟である葉月翔と交際していた。
希恵は当時から非常に美しい女性であったし、彼女自身自分の美しさを十二分に理解していた。
それ故に多数の男と関係を持っていてかなり遊びまわっていたそうだ。
もちろん葉月翔もその中の一人であった。
翔はそのことを知っていた。
でも、美しい希恵を愛していた。
ある日、彼女が妊娠した。
当然ながら関係を持っていた男性が多すぎて誰の子かわからない状態だった。
翔がとても優しく、金持ちである事を知っていた希恵は翔の子だと言い張り彼に擦り寄った。
そして、翔もそれを受け入れた。
希恵と翔の結婚が決まり、
翔は希恵を家族へ紹介した。
これが悲劇の始まりだった。
兄である哲夫が希恵に一目惚れしてしまったのである。
そして、希恵は哲夫に迫られた際に簡単に体を許した。
翔と希恵の結婚の話が進んでいく中、
哲夫と希恵の関係も続いていた。
結婚まであと少し。
そんな時に翔は釣りに出かけた際に乗っていた船が高波によって転覆、それから行方がわからなくなってしまったそうだ。
彼女にとってこれはかなり痛い出来事であった。
もう中絶できる時期もすぎてしまっている子供が腹に居る状態で婚約者に先立たれては私はどうすればいいのか?
コブ付きの女なんて誰も相手にしてくれない。
「腹の中の子さえいなければ。」
彼女は彼の死よりその事をずっと嘆いた。
そんな彼女に手を差し伸べたのは
翔の兄である哲夫であった。
彼女は哲夫と結婚した。
翔を陥れたのが兄、哲夫とも知らずに…
この内容を読み上げると
彰人はニヤリと笑った。