第1章 小さなきっかけ。
「琴乃ちゃんー!一緒帰ろう!」
葵が笑顔で琴乃に駆け寄ってくる。
「あー。ごめん、今から彼氏の家行くわ。」
琴乃がそう言うと葵はショボンとした。
「そっかぁー!じゃぁ、また明日一緒帰ろうねっ!」
「ん~?明日?わかんない。てかさ、宿題出過ぎだよね。やってらんない。」
琴乃はボヤキながらカバンに教科書を押し込む。
そして、宿題のプリントもカバンに押し込もうとした時、
その手を葵が掴んだ。
「あ、わ、私!琴乃ちゃんの分の宿題もしようか!?」
「…へ?いいの!?」
琴乃は思わず顔を上げる。
「うん!一つも二つも変わらないし!…あ、そのかわりね、明日一緒に帰ってくれる?」
「え!?それくらい全然いいよ!え?まじで宿題してくれんの?」
「うん!」
琴乃は葵のお言葉に甘えて
大量のプリントを葵に手渡す。
葵はニコニコとしながらプリントを受け取る。
「じゃぁ!明日!約束ね!」
そういうと、葵は教室から出て行った。
…少し計画的だった自分に思わず笑いがこみ上げてくる。
葵はいつも琴乃の言う事を聞く。
葵は琴乃を絶対に裏切らない。
琴乃はそんな彼女を利用していた。