第1章 小さなきっかけ。
葵は興奮気味に事件のことを語ると、
すっきりした様子で自分の席へと戻って行った。
クラス全体も、
朝からその話題で持ちきりのようで
ずっとざわざわと不穏な空気が流れていた。
チャイムが鳴り、
教師がいつもより緊張した様子で教壇に立った。
号令が終わると、
教師は口を開いた。
「みんなも今日のニュースを見て、知っていると思いますが、我が校の生徒が先月から連続して起こっている女子高生失踪事件に巻き込まれた可能性が出てきました。」
その教師の言葉に
再び教室中がザワつく。
「はい!静かに!…このことを受けて、明るい時間に生徒を帰した方が良いと判断し、今日から少しの間授業は昼までとし、部活動、居残りは一切禁止とします。」
その発言に生徒たちは歓喜の声を上げた。
「こら!喜ぶんじゃない!いいか?早く帰ったからって絶対遊びに行くんじゃないぞ!家で自主学習だからな!?絶対家から出るんじゃないぞ!?」
そんな教師の声も聞かず、
教室中は歓喜の声で溢れていた。
家で自主学習なんてするはずがない。
せっかく昼から暇になるのだ。
みんな遊びに行くに決まっている。
もちろん、琴乃もお昼からの予定を考えていた。