第2章 憎悪。
「おなか…痛くて…薬…ないかなって…。」
震えるような声で琴乃はそう嘘をついた。
「え?薬?…薬はお母さんの部屋にはないわよ?」
琴乃はゆっくりと後ろを振り返った。
母はニッコリといつもの笑顔を琴乃に向けていた。
「あれ?そう…だっけ?…そっか。間違えちゃった。」
琴乃はそういうと、
無理矢理に誤魔化すように笑った。
すると母が琴乃の方へずんずんと歩み寄ってきた。
思わず身構えた。
母の手が琴乃の額に触れる。
「んー。熱はないみたいね。琴乃ちゃん疲れてるんじゃない?お母さん琴乃ちゃんの部屋までお薬とお水持っていくから寝ときなさい。」
お母さんはニッコリ笑ってそういうと、
琴乃に背を向けさくさくと歩き始めた。
緊張が解けどっと力が抜けた。
何とかやり抜けた…。
琴乃は深呼吸をすると
部屋へと戻った。