第2章 憎悪。
キッチンの椅子に腰掛けると、
母がどんどんと夕食を机に並べる。
「今日は琴乃ちゃんの好きなシチューだよぉー♪」
母は嬉しそうににっこり笑うと琴乃の前にそれを出した。
じっとシチューを見つめた。
異物が入っている様子はない。
「いただきます。」
「はーい!」
念のためシチューをスプーンでかき回してみた。
特に何も…ない?
「…なにやってるの?」
ぱっと顔をあげると、
今まで見たことのないような冷たい目をした母が
こちらを見ていた。
「…あ、ごめん…あんまり…お腹空いてなくて…。」
琴乃がそういうと、
母はニコっと笑った。
「そう。でもね、食べ物を粗末にするような真似は許さないわよ。ぐちゃぐちゃに混ぜまわしたんだから、ちゃんと全部食べなさいよ!」
「うん…。」
その母の笑顔がなんだか怖かった。
きっと、あのブログを見てしまったせいだ。
あれは母じゃない。
違う。
琴乃はそう言い聞かせて、
口の中へシチューを運んだ。