第1章 小さなきっかけ。
思わず顔をしかめた。
その表情から察したのか男はヘラッと笑った。
「ごめん!今朝魚釣り行ってさぁー…ちょっと生臭いんだけど勘弁な!」
そういえば優斗も魚釣りが好きだと言っていた。
男ってどうして魚釣りなんかが好きなんだろう?
琴乃は黙って助手席に座るとシートベルトを締めた。
男はエンジンを入れると、
車を発進させた。
「ねぇ、優斗の彼女ちゃんは名前なんていうの?」
「葉月琴乃。」
「お!琴乃ちゃんって言うんだ可愛い名前だねぇ!」
男はヘラヘラと笑う。
「あなたは?」
「俺?俺は榎波彰人(えなみ あきと)。優斗と同じ学部で同じサークル。よろしくね。」
「はい。」
彰人はヘラヘラとよく喋る男だった。
彰人に家までの道のりを案内し、
あっと言う間に家まで到着した。
琴乃は彰人にお礼を言うと、
車を降りようとした。
が、彰人が降りようとする琴乃の手を掴んだ。