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Fake Love

第1章 プロローグ


その3日ほど後。
終業式で、明日からは春休み、という日だった。


責任感が強く、お人好しなえみは、みんなが入りたがらないその日も、保健室当番になっていた。

終業式の日に保健室に来る人なんてほとんどいない。
えみは無人の保健室で春休みの宿題をしていた。

部活動の声がうっすら聞こえてくる。

ガラッ

いきなりドアが開いた。
入ってきたのは日吉くんだった。

「あ。」
お互い顔をみて声が出た。

みるとジャージの半ズボンからのびた膝が、血で染まっている。
結構血が出ていて痛そう。

「だ、大丈夫?」

えみは慌てて立ち上がって救急箱の元へ歩いた。

「練習中に転んだだけだ。」

えみは日吉を丸椅子に座らせて、自分はしゃがんで傷口を消毒した。

「俺はこれくらい大丈夫だって言ったんだが、おおと…痛っ」

やっぱり痛いんやないかい。
えみは笑いをこらえた。

「もしかして、鳳くんが?」
「ああ、鳳が保健室に行けってうるさいんだよ。」

えみは少し笑った。鳳くんらしいな。

消毒し終えた傷口にガーゼをあててテープで留めた。

「はい、終わったよ。」
えみは立ち上がった。

日吉くんと二人きりなんて初めてだから、何を言えばいいのか…。
何か言わなきゃ。

「日吉くんと同じクラスなのも今日までだね。」
「…そうだな。」

沈黙が怖くて変なこと言ってしまった。
日吉くんも不思議そうな顔をしてる。

ガラッ

沈黙を破る救世主が現れた。

「あれ、今日も当番愛内さんなんだ。」
入ってきたのは鳳くんだった。

「うん。今日はみんな嫌みたいだからね。」
「愛内さんは偉いんだね。」
そう言って鳳くんは笑顔を見せる。
本当に天使に思えてきた。

「鳳、何しに来たんだ?」
日吉くんは椅子から立ち上がって振り返った。

「ああ、日吉大丈夫かなって…」
「ったく、このくらいで騒ぐなよ。」

日吉くんはドアに歩いていった。
よかった、歩くのに支障は無いみたい。

「お前までいなくなったら部活は今どうなってるんだよ。」

日吉くんって本当に素直じゃないなぁ。

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