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Fake Love

第1章 プロローグ


「手間かけたな。」
日吉くんはえみの方を一度振り返り、そう言って保健室を出ていった。

「じゃあ、愛内さんありがとう。」
鳳くんもお礼を言って日吉くんを追いかけていったと思ったら、もう一回ドアに顔を出した。


「あ、そうだ。この前ちゃんとお礼言えてなかったけど、練習来てくれて嬉しかったよ。ありがとう。」

「え?ああ、こちらこそ、楽しかったよ。」
「本当?それはよかった。またいつでも来てね…それと…」
「ん?」

鳳くんは何か言いにくそうにしている。

「来年は、同じクラスになれたら嬉しいなって思って…。」
「そうだね。私も。」

それを聞いて鳳くんは微笑んだ。


「じゃ、じゃあ、また。」
「うん。」

鳳くんはドアを閉めて歩いていった。



日吉くんと鳳くんって性格全然違うんだなー。
そんな二人が部活を引っ張ってるのかと思うと、テニス部はいつもどんな雰囲気なのか気になる。


えみはまた春休みの宿題にとりかかった。


でも進まない。手が動かない。

考え事をしていた。
この前卒業してしまった跡部先輩が思い浮かんだと思うと、その姿は違う誰かの後ろ姿に変わる。
同じジャージなんだけど、違う人。


日吉くん?鳳くん?
それとも全然違う人かもしれない。


でも、跡部先輩を忘れる必要は無い。
だって高等部でもきっと跡部先輩はまた生徒会長になって学校を仕切ってる。

えみも一年すれば高等部だ。


そのときは、まだそう思っていた。
無理に忘れるつもりも、新しく恋するつもりもなかった。


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