第1章 プロローグ
「相変わらずギャラリーの数すごいねー。」
久しぶりにりさとテニス部を見に来た。
先輩がいなくなってから見に来ると、いつも誰を見ればいいのかわからなかったけど、今日は違う。鳳くんを見に来た。
「ねぇ、りさ、鳳くんってどんな人なの?」
とくに深い意味はなくりさに問う。
「え、えみ鳳くんのこと好きなの?」
「違うー!!この前保健室に来てちょっと喋っただけ!」
すぐそういう風に考えるんだから、りさは!
「なーんだ。まぁ、優しいし、背高いし、テニス部レギュラーであのルックスだから、当たり前だけど女子には人気だよー。」
「なるほどねー。」
「興味あるの??このー!面食いかー?」
りさが肘で小突いてくる。
「そういうんじゃないー!」
モテるっていっても、やっぱり跡部先輩のほうがすごかったよなー。
あ、また先輩のこと考えてる。
慌てて目の前のコートに集中する。
今日、テニス部を見に来たのには、先輩のことを吹っ切りたいっていうのもあった。
「10分休憩ー。」
部長の日吉くんの声だ。
日吉くんは同じクラスだ。でも数回しか話したことはない。
なんだか、近寄りづらくて。
鳳くんは飲み物のボトルを片手にタオルを首にかけ、えみたちのところに走って来てくれた。
「愛内さん、来てくれたんだ!」
笑顔を向けられ眩しい。
「うん、足大丈夫?」
「愛内さんが応急処置してくれたおかげで、すっかり問題ないよ。」
「よかった。」