第1章 プロローグ
「あ、俺は鳳長太郎です。C組なんだけど、分かるかな?」
鳳くんはテニス部レギュラーで、有名なのに。
同じ学年で知らない人なんているのかな?
違う学年でもきっと知らないひとは少ないはず。
「テニス部ですよね?知ってますよ。」
今度は優しい笑顔で言えた。
「よかった。愛内さんって、よくテニス部の試合とか練習、見に来てくれてたよね?」
「あぁ、はい。」
跡部先輩を見たくて、たまに友達と見に行っていた。
幸い友達もテニス部を見たいと言っていたから、理由を言わなくても一緒に行ってくれた。
「でも、最近来てないよね。」
鳳くんは少し悲しそうな顔をした。
そう、先輩が引退してからほとんど行ってない。
自分からは友達を誘わなくなった。だって目的の人はもういないから。
「行っても、意味無いかな~って。」
えみは苦笑いした。
先輩はいないから、行っても意味無い。
「そんなことないよ!俺、来てくれると、嬉しいよ!」
鳳くんは少し声が大きくなった。
鳳くんは私の言ったことの本当の意味を知らないから、私が、応援しても届いてないって意味で言ったと思ったんだろう。
「あはは、ありがとう。」
りさのいってた通り、優しいんだな~。
「だから、また来てほしいな。」
「うん。わかった。」
社交辞令みたいなものなんだろうけど、嬉しかった。
先輩が卒業して、楽しみが無くなっていたから、鳳くんの優しさが嬉しかった。
またテニス部見に行ってみようかな。