第2章 変化
「あ、鳳、そういえばこの前の三送会の写真。」
日吉くんが手帳に挟んであった封筒を鳳くんに渡した。
「あー、ありがとう。」
鳳くんは封筒を受けとると、中にはたくさんの写真が入っていた。
「なつかしいなー。」
一枚一枚見る鳳くんの顔には優しい微笑みが浮かんでいる。
「えー、テニス部の三送会の写真?見たい見たい!」
りさが手を伸ばす。
「いいよ、はい。」
全部見終わった鳳くんがりさに手渡した。
わ、私も見たい…!
「私もみていい?」
「もちろん。」
りさが見終わった写真から渡してくれた。
「あ、これ宍戸先輩だよね!」
鳳くんに写真を指差してきいた。
「うん、そう。」
鳳くんと宍戸先輩のツーショット。
写真の中の鳳くんは、ちょっと涙目。
鳳くんは青い帽子 を被ってる。
「この帽子って…」
「うん、宍戸さんがいつも被ってるやつを被せてくれたんだ。」
この写真だけで仲良かったんだって伝わってくる。
2枚目の写真は、鳳くんが眼鏡の人と赤っぽい髪の人に挟まれてる。
「忍足先輩と、向日先輩…って、わからないかな?」
鳳くんが説明してくれた。
「名前は知らなかったけど、試合でみたことある!」
「うん。ダブルス組んでたかな。」
卒業生皆と個別に写真をとったみたいで、写真はたくさんあった。
どの先輩も優しい表情で写ってて、どの写真も鳳くんは涙目だ。
鳳くん、先輩に好かれてたんだな。
そして鳳くんも先輩方が好きだったんだな。
最後の写真にめくったとき、心臓を何かに貫かれたような感覚になった。
跡部先輩と鳳くんの写真。
「跡部先輩…」
「知ってるの?…ってさすがに誰でもあの人は知ってるか。」
「派手だからな。」
日吉くんも同意した。
誰にも跡部先輩を好きだと言ったこともないし、跡部先輩と話したこともない。
目があったことだってなかった。
その跡部先輩が笑顔でこっちをみている写真。
こんなにじっくりみるのは初めてだった。
それに先輩が卒業してから少し経ってるから、忘れてた部分もある。
目も口も泣きボクロも。