第11章 夏の夜の花*伊月*
人混みを抜け、神社の脇道を通り、ちょっとした展望台のようなところに出た。
二人の下駄の音が、から、ころと静けさの中に響いた。
「ふぅっ…。急がせてごめんな。…あそこ座ろうか。」
俊くんの指し示す先を見ると、ベンチがいくつか並んでいる。
二人並んで腰掛け、さっきのかき氷を口に運んだ。
火照った体にひんやりと注す冷たさが心地よかった。
「俊くん、こんなところ知ってたんだね。」
人が集まっている会場から少しだけ離れた穴場。
人もまばらにしかいなかった。
「ロードワークしてる時に見つけたんだ。ここからなら静かに花火が見られるかなと思って。」
その時俊くんの携帯が鳴った。
「もしもし、カントク?…うん、はぐれた。…あぁ。一緒にいる。」
リコ先輩からの今どこ電話かな?
せっかく二人きりになれたのに、戻らなくちゃいけないのかな…。
「…うん、わざと。ごめん。二人になりたかったからさ。」