第11章 夏の夜の花*伊月*
えっ!?
俊くん今なんて言った!?
どうしよう…。「二人きりになりたい」って思ったの私だけじゃなかったんだ。
顔にまた熱が戻り、熱くなるのを感じた。
俊くんが電話を切り、両手を顔に添えて戸惑う私を見てふっと笑った。
「…まぁカントクも予想はしてたって。無事に名前を送り届けてくれるならいいってさ。」
「…私だけもっと一緒にいたいって思ってるのかと思った。」
きっと顔は驚くほど赤くなっているだろう。
でも、夜の闇はそれを隠してくれていた。
「まさか。俺だって名前とどうやって二人になろうか考えてたんだから。」
俊くんの言葉、行動で私はこんなにも幸せな気持ちでいっぱいになる。
花火の時間になり、夜空に大輪の花が咲く。
色とりどりの鮮やかな光と響き渡る打ち上げ音。
手を繋ぎ、寄り添い、花火を見つめる。
「来年も二人で花火見ようね。」
「来年だけじゃないよ。これからずっと。」