第11章 夏の夜の花*伊月*
花火大会当日。
練習もそこそこに切り上げ、私は一度自分の家に戻った。
せっかくの花火大会だし、浴衣で行きたいなと昨日押し入れの奥から浴衣を出しておいた。
お姉ちゃんの浴衣。
白地に紫と淡いピンクの花が散りばめられている。
ピンク色の自分の浴衣はちょっと幼い気がした。
大人っぽい彼と並ぶことを考えて、少しだけ背伸びすることにした。
いつも下ろしている髪もおだんごにし、藤の花のようなかんざしで髪を飾る。
普段はほとんどしないメイクも念入りに。
俊くんとの待ち合わせの時間が近付く。
…なんて言ってくれるかな。