第11章 夏の夜の花*伊月*
帰り道。
コンビニで買ったアイスを二人で半分こして並んで歩く。
「俊くん、明日花火大会だね。」
隣にいる彼にさりげなく言ってみる。
「そうだね。去年も部員全員で行って、すごく楽しかったよ。花火綺麗だったし。」
「あ、そうなんだー…。」
俊くんとはつい1ヶ月からお付き合いを始めた。
バスケ部の選手とマネージャー。
近頃は合宿や練習試合で、当然休みはほとんどない。
中々デート出来ないのは分かってたけどね。
いざ実感すると、やっぱり寂しい。
人間は欲が尽きない生き物だな。
「俊くんの彼女になりたい」っていう願いが叶ったのに、今度は「もっと一緒にいたい」なんて欲張りだ。
隣の彼を見ると、夏の強い日射しに照らされているのに涼しい顔してる。
「花びらみたいな花火!キタコレ!」
…だめだ、こりゃ。