第10章 恋する香り*実渕*
「えっ!!なん…」
そう言い切る前に私の目の前が何かに覆われて真っ暗になった。
「…名前」
玲央ちゃんはそのまま私と真っ直ぐ視線を合わせた。
「私があなたを好きだから。毎日あなたの髪を結うことが楽しみで仕方なかったのよ。」
玲央ちゃんは男女関係なく、名前に「ちゃん」を付けて呼ぶ。
私の聞き間違いでなければ、今確実に「名前」って呼んだ…。
彼の方へ目を運ぶと、いつものどこか大人びてて余裕を感じさせる表情ではなかった。
「玲央、あたしもここまで会いに来ちゃうほど好きなんだよ。あたしにとってもあの時間は幸せだったの。」
「…っ!」
彼は頬を染めて優しく微笑んで、私の髪に顔を埋めた。