第10章 恋する香り*実渕*
とりあえず入り口の前で待つことにした。
夜風が心地よく髪を揺らす。
風に揺られて彼とお揃いの香りがした。
赤司くん、何で私のこと知ってたんだろう?
そんなことをぼんやり考えていた。
「…っ!名前ちゃん!」
ずっと名前を呼ばれたかった声。
「玲央ちゃん!なんで!?」
珍しく息を切らして焦った様子の玲央ちゃんが目の前に現れた。
「はぁっ…。征ちゃんに急いで入り口まで行けって言われて…。」
ふーっと一息つくと、彼は私の元へ歩み寄った。
「…試合中あなたの声が聞こえた気がして。でも、こんなところまで来るはずがないと思った。」
あの歓声の中で、彼のもとへ自分の声が届いていた。
それだけで胸が熱くなった。
「メールを見て、あなたがここにいるかもしれないって驚いたの。征ちゃんは私の様子に気が付いたんでしょうね。」
「どうして赤司くんは私の顔と名前知ってたのかな?話したことないのに…。」
「…私が征ちゃんにあなたのこと話していたからよ。」