第10章 恋する香り*実渕*
「…ふふっ。同じ香りね、私たち。」
ふわりとあの甘くて切ない香りがした。
「あたしね、この香り大好き。もちろんいい匂いだからもあるけど、玲央と一緒にいるような気がするんだ。」
「…もうこんなに近くにいるじゃない。どれだけ私を感じたいの?」
玲央はくすっと笑って顔を近付ける。
そのまま私は瞳を閉じると、暖かく甘美な温もりを唇に感じた。
すっと目を開けると、彼は愛しそうに私の髪に触れた。
「髪の毛きれいになったわね。帰ったら新しい髪飾りでも一緒に買いに行きましょうか。」
「うん!楽しみ!」
あぁ、あの日寝癖をつけたままでいた自分を褒めてあげたい。