第10章 恋する香り*実渕*
試合終了のブザーが会場に響き渡る。
洛山が桐皇を下し、IHを制した。
大きな歓声に包まれる中、選手は安堵の表情を浮かべていた。
表彰式も終わり、人もまばらになる会場で玲央ちゃんにメールを送った。
「玲央ちゃん!洛山高校優勝おめでとう!!」
さて、帰ろうかなと入り口へ向かう。
「苗字さん」
呼び止められて振り返ると、洛山の生徒なら知らない人はいない赤髪の男の子がいた。
「はっ…はい!何で私の名前を知ってるんですか?」
もちろん赤司くんと言葉を交わしたのはこれが初めて。
私は彼を知っていても、彼とは面識がなかった。
「入り口の前で待っていてほしい。」
私からの質問には答えず、そう告げると彼は颯爽と去っていった。