第10章 恋する香り*実渕*
夏休みになり、私は夏期講習で学校には来ていたが、玲央ちゃんに会うことは出来なかった。
夏休み前にIH出場が決まっていたバスケ部。
たまに体育館をふと覗くと、緊迫した空気がひしひしと伝わり、とても玲央ちゃんと話が出来る状態ではなかった。
私は毎日彼の魔法の手から力をもらっていたのだろう。
会えなくなってから、寂しくてどこか元気が出なかった。
IH出場の前日、私は彼にメールした。
「玲央ちゃん。明日からIHだね。玲央ちゃんの魔法の手で優勝を掴んできてね!」
ふわりと香る彼と同じ香り。
切なくて甘い花の香り。
何となく彼が側に居るように感じることができた。