第1章 大きな一歩*伊月*
やっぱり伊月先輩だった。
「具合どう?大丈夫?」
屈んで私に目線を合わせてくれた。
一瞬瞳に吸い込まれそうになった。
「もう大丈夫です。すみませ…」
言葉を言い終える前に、力強く抱き寄せられた。
「いっ…伊月先輩!?」
心臓の音がどんどん速くなる。
伊月先輩に聞こえてしまうかもしれないくらいに、大きく聞こえた。
「…頑張っているのはちゃんと伝わっているから。」
「普段も朝練絶対一番に来て準備してる。今回も慣れていないのに、一生懸命食事の支度とか皆のサポートしてくれてた。」
「皆口には出さないけど、苗字のこと信頼してるよ。」
何でこの人は私が欲しい言葉をくれるんだろう。
ふいに大粒の涙がぽたぽた流れた。
「…っ、ありがと…う、ござ…います。伊月先輩は本当に周りがよく見えていますね。」
涙を拭いながら、伊月先輩の方を見た。
「…特別だからだよ。」